車いすテニスを支えている人たちVol.1(後編)ホルスト・ギュンツェルさん(スポーツサイエンスアドバイザー)
ドイツ出身のホルストさんは、40年以上の間、多くのアスリート達のトレーニングをサポートしてきました。車いすテニスを支えている人たちVol.1(後編)では、実際の車いすテニストレーニングについていくつかご紹介します。
〇車いすテニス選手の専門的なフィットネストレーニングのプログラムをいくつかご紹介ください。
① 敏捷性(素早い動作)とスピードトレーニング
最初はその場で車いすでのシンプルなターン動作(¼, ½,一周)。この動作を3~4回後に、ベースラインからサービスラインまで、次にベースラインからネットまでのショートスプリントを加えていきます。
そのほか、横のダブルスラインとシングルラインの間を車いすでの速い前進・後進動作を行うエクササイズがあります。ダブルスラインから力強く前進プッシュし、シングルラインで急激に制止し、また力強くダブルラインに後進します。これらを2~3回連続的に行います。これもまた、前方プッシュ後にシングルラインで1周してからダブルラインへの後方動作というふうに付け加えることもできます。つぎに、この動作をT字型に側方へそれぞれ約1m右と左へ、前と後ろへ、1セット当たり3回程度実施します。
敏捷性とスピードを改善するその他のエクササイズには、方向変換を伴うスプリントがあります。例えば、ベースラインからサービスラインへ、そこでターンしてベースラインに戻る。センターラインからサイドラインへ、ターンしてセンターラインへ戻る。コーン(マーク)を設置してターンの際にコーンを回ることも可能です。
② 持久力トレーニング
一般的な基礎持久は、交通道路以外の陸上競技場(スタジアム)あるいは自転車専用コースなどで中程度のテンポを保ちながら20~30分走行するトレーニングです。ただし、このようなトレーニングはシーズンオフなど大会がない期間中に行うことが有効です。
専門的持久トレーニングは、いわゆる “スパイダー”で、シングルライン、ベースライン、サービスライン、センターラインの角にコーンを置き、ベースラインに中心マークをつけて、中心マークからスタートしコーンを回り中心マークに戻り、次のコーンを回りまた中心マークにもどり、全コーンを終了後、中心マークに戻ってゴールです。このエクササイズはラケットなしまたはラケットを保持しても実施できます。所要時間を計測します。
※スパイダートレーニング
③ パワートレーニング
ストロークパワーの向上には、メディシンボールの投てきが適しています。その投てきはフォアハンドやバックハンドのストローク動作またサーブ動作と同じように行います。メディシンボールの重量は500gから最大2㎏まで、形状は手に持ちやすいものから大きめのロープ付きのものまでさまざまあるので、個人に合わせてバリエーションを持たせます。投てきはセット当たり8~10回の反復数で2~4セット行います。重要な点は、良好で力のこもった実施です。
上記に主なトレーニングを紹介しましたが、全ての人がいつでもできる共通のトレーニングプログラムはありません。プランニングの際には、まず選手の身体的な障害の種類とこれまでのトレーニング経験ならびにトレーニングのための物的環境条件を考慮することが重要です。
いつも同じプログラムばかりを行うことも意味がありませんし有効ではありません。何故なら、時間経過に応じて単調化し、パフォーマンス向上が生じないからです。つまりフィットネスのトレーニングでも、変化に富み創意に満ちた内容で実施し、段階的にトレーニングの要求内容を引き上げていくことが不可欠です。
【インタビューを終えて】
今回は簡単なトレーニングメニューを教えていただきましたので、ぜひ参考にしてみてください。
この取材に協力していただいたホルストさんをはじめ、場所を提供してくださいました大洗ビーチテニスクラブの皆さんに御礼申し上げます。
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